- 初めにお読みください
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はじめに click to expand contents
このサイトには声の女性化手術に関する情報を掲載しておりますが、手術をおすすめする目的で作られたものではありません。
手術効果や術後経過は個人差が大きく、書かれている情報が全ての方にあてはまるわけではないことをご理解いただいた上でご利用下さい。
TSGC大森です。
タイの病院で受けられる「声の女性化手術(VFS:Vocal Feminization Surgery)」は、実際に手術を受けたタイ人の声を病院のサイト上で聞くことが出来ますが、日本語での音声や手術についての詳細を記したページはネット上にもあまり見られないように思います。タイの病院は国外から来て手術を受ける方も多いため、手術を受けた方の経過については追跡調査が難しく、病院側でもほとんど把握していないという事情もあるようです。
私(大森)も、2007年12月にヨーサガン・クリニックで「甲状軟骨及び声帯襞縮小」の手術を受けました。このサイトでは、手術を受けた方の声サンプルと体験者からの情報を集め、術後自分なりに気づいた点も交えながら書いています。
「喉の手術」に限らず、手術には多かれ少なかれ必ずリスクが伴います。声の手術は術後に安定するまで長期間かかるため、精神面のコントロールも考えていかなければなりません。もしこれから手術を希望している方であれば、オペの内容、メリット・デメリットをしっかりと理解した上で手術を受けることをおすすめします。
音声データは手術体験者にコンタクトを取り、遠方でもなるべく実際にお会いしてインタビューさせていただいております。数人の方にサンプル録音の了解をいただいておりますが、双方の都合を合わせ直接お会いするという条件ですので更新は不定期になります。
このページの内容についてご不明な点・ご質問などは、 tsgcomori@gmail.comまでメールにてお気軽にお寄せください。
また、国内外問わず「声の女性化」手術を受けた方、ささいなことでも情報をお寄せいただければ幸いです。
タイで受けることの出来る声の女性化手術の資料、及び料金等についての情報は、下記サイトからご覧いただくことができます。
タイランドSRSガイドセンター(PC)
タイランドSRSガイドセンター(スマートフォン向け)
【謝辞】
多くの皆様に、術後情報や音声・写真等のデータを快く提供いただきました。本当にありがとうございました。
※2009年9月17日:ページ構成見直しに伴い、音声データはPCのみのコンテンツとさせていただきました。 - ヤンヒー病院の手術について
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手術概要 click to expand contents
ヤンヒー病院での手術は、「輪状甲状軟骨接近術(りんじょうこうじょうなんこつせっきんじゅつ)」によるものです。甲状軟骨と輪状軟骨の間を糸で引きよせて声帯を緊張させ、声の高さを変える手術のことをいいます。
接近術
特徴(これはあくまでもヤンヒーの場合です)
■声帯を直接いじらないため、術後短期間であれば(声帯じん帯が伸びる前)元の状態に戻すことができる。
■首の傷痕の位置は、正面から見て若干目立つ位置になる。
■手術後に発声禁止期間(1週間程度)を過ぎれば、(一応)発声できる。
■ヤンヒーの手術では、声帯じん帯が伸びることを考慮しかなり強めに引っ張るため、手術後の声は超裏声になっている。ここから声帯じん帯が伸びてある程度落ち着いたレベルの声を出せるようになるまでに長くて2、3年かかるといわれる。
■手術前に高い声の出し方がわからなかった人には、半ば強制的にボイトレさせられているような状態になるので、将来的に声帯じん帯が伸びて声が元のレベルに戻ってしまった後でもそれなりに高い声を自分でキープできるようになっている可能性がある。
■ノンカム・フルタイムの人が受ける場合は、術後の声の状態を説明しづらい可能性がある。 -
手術の流れ click to expand contents
・通訳と一緒にドクターの診察と術前カウンセリング。
・ファイバースコープで現在の声帯を確認する。
・その状態のまま、「あ~~」と発声して写真を撮る。
・声のピッチ(Hz)を測定する。
・その後、地声を使って300~500字程度の文章を読む。(録音していると思われる)
・受付に行って手術の手続きをして、手術費用を支払う
・術前検査・レントゲン等
・手術(1~2時間程度)
・発声禁止1週間程度(この期間は咳もささやき声も絶対に禁止です)
・抜糸する。この時に術前と同じようにいろいろな検査をする。
・発声可能(ただし、かなりの裏声状態になっています)
・2、3年後には声がほぼ落ち着いてくる -
手術体験者の声 click to expand contents
◇タンがからむ(術後1年位まで)。2年ほど経ったらほとんどなくなった。
◇声が高くなりすぎてしまう。
◇粉っぽい食べ物を食べた時や(クラッカー等)、柑橘系のホットドリンク等を飲もうとした時、むせやすかった(術後1年位)
◇術後はしばらくは声のコントロールが全く利かなかった。ほぼ棒読み状態。
◇声域が狭くなるため、初期は特に歌が歌いづらい。ある程度抑揚が付けられるようになってきたら、高い歌は問題なく歌える。
◇術後2年位で声も、精神的にもかなり落ち着いた。最初は「あいうえお」の「え」が発音できないほど抑揚がつけられなかった。
◇日本での同様の手術では、手術中に声を出しながらピッチを調節する方法もある。この場合、術後すぐに最適な声の高さで発声することが可能だが、声帯じん帯は伸びたりして数年で元のピッチに戻ることもあるらしい。(完全に戻るわけではない) -
手術のキズ click to expand contents
輪状軟骨の少し上付近の真正面に傷が出来ます。
ヤンヒー手術痕横2年
ヤンヒー手術痕正面2年
写真はヤンヒーでの術後2年の方です。
キズの場所が分かりやすいように照明による影をつけていますが、実際に目の前で見ると、色、キズ跡共にほぼわからない程度に回復していらっしゃいました。 -
術後の発声練習 click to expand contents
術後しばらくは抑揚のない高い声しか出せなくなります。
手術によってピンと張った声帯が徐々に伸びてくると、段々と低い方へ抑揚がつけられるようになってきます。抑揚がほとんどつけられない程の高い裏声になるので、周囲の人から「聞き取りにくい」状態になっていることが多いです。こういう時には、なるべくゆっくりと話すようにしてあげましょう。「低い方へ抑揚がつけられるように練習する」という感覚になると思います。
高い声を出して話すことは、「こんな声でいいのかな?」とか「今までと違う声で家族や知人と話すのは恥ずかしい」と最初のうちは躊躇して、なかなか一歩が踏み出せない方もいるかと思いますが、この手術では強制的に高い声になってしまうため、術後数年経っても「自分の高い声」に慣れるという利点はあるようです。 - ヨーサガン・クリニックの手術について
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手術概要 click to expand contents
ヨーサガン・クリニックの手術は「甲状軟骨及び声帯襞縮小(こうじょうなんこつおよびせいたいへきしゅくしょう)」という術式になります。甲状軟骨を切開して大きさを縮小、同時にその大きさからはみ出す部分の声帯じん帯を短くします。甲状軟骨の縮小により喉仏もなくなります。(襞=「ひだ」のこと)
なお、TSGCのヨーサガンの紹介ページに書かれている「最長持続期間は6年間」というのは、「この資料を作った時点で、術後6年間までの追跡調査が出来ている」という意味のものです。この術式は甲状軟骨と声帯襞の一部を切除してしまう不可逆な手術であり、手術後に声が元に戻ることはありません。詳細はこのサイトの「声が元に戻る?」の項目を参照してください。
ヨーサガン術式
A-皮膚切開
B-甲状軟骨切開(中心から4mmづつ)
C-Undermined area:掘る部分,Excision line:切除ライン
D-喉頭部分の縫合
E-Dの冠状断像
F-軟骨閉鎖
特徴
■術後に元の状態に戻すことはできない(不可逆である)
■声の回復がゆっくりで時間がかかる(半年?1年以上)
■発声禁止期間(2週間)経過後の声は、空気が漏れるような声(音)。
■首に出来るキズが正面から目立ちにくい。
■喉仏部分が切除されるため目立たなくなる。
■場合によっては、別の術式で手術を受けた後に受けることも可能。例えば、ヤンヒーの手術を受けた後にこの手術を受けられる場合もある。
■全身麻酔の手術になるため、術後の声がどのようになるか全くわからない。手術中に声の高さを確認しながらという術式はできない。
■回復するまでの期間が1年程度と長期間に及ぶため、職業によっては支障が出ることもある(電話応対など)。ただし術後は声を出している方がトレーニングになり、回復が早くなる例もあるようだ。
■ヤンヒー病院の手術と違い、手術後に極端に高い声になることはない。ほとんどの場合「周囲から息苦しそうに聞こえるほどにかすれた声」になるため、「甲状腺の手術だった」「喉を強くぶつけて手術した」等のあいまいな理由で休みをもらっても怪しまれにくい。(会社等で診断書を求められる場合は使えない)
■個人差があるが、多かれ少なかれ嗄声(させい:声のかすれ)が残ることが多い。 -
手術の流れ click to expand contents
一般的な流れ
・通訳と一緒にドクターの診察・カウンセリング。
・術前検査(簡単なもの)
・受付で手続きをして・手術代金の支払い。
・手術(2~3時間位)
・1週間後に首のキズ部分の抜糸をする(まだ発声してはいけない)
・術後2週間で発声禁止期間解除。ここまで、咳・ささやき声・くしゃみも絶対禁止。どんなにもどかしくても我慢してください。
・この時点で声はほとんど出ない。空気が漏れるような音だけ。
・1ヶ月後から発声練習を本格化していく。
・3ヶ月を過ぎたらカラオケに行っても良い。
・半年程度で徐々に声に芯が出てくる。
・1年程度で声が落ち着いてくる 。
※手術前に甲状軟骨の隆起が小さい方、甲状軟骨がやわらかい方は術後すぐに発声許可が出ることもあるそうです。 -
手術体験者の声 click to expand contents
◇術後の回復期間が長く、ゆっくりである。
◇声がうまく出ない状態が長期間続くために、精神的につらいことがある。
◇声の出し方にコツがいる。(トップページから「術後のケア」を参照)
◇喉周辺の構造が大きく変化するため、発声しやすい方法を見つけるまで時間がかかる。
◇手術後1カ月は呼吸が少し苦しかった。
◇術後2年でかすれ声が少しあるが、ベースは女性の声でそれがかすれているように聞こえると言われる。
◇かすれ声が強く残っていて困る(術後2年弱の方)
※術後経過は、個人差が大きく出ることが分かっています。
この手術体験談・術後経過を書いている方のページ(登録順)
→とまぐみ←事情により閉鎖したそうです。
→ボイスブログ始めますた。 -
手術のキズ click to expand contents
ヨーサガン手術痕横9か月
あごのラインを首の方へ触っていって、カーブの辺りの「しわ」に合わせて切っているようです。
顔が正面を向いているとアゴに隠れてキズはほぼわかりませんが、顔を上に向けたり横を向いたりして首の皮が引っ張られた時には、少しキズが盛り上がって見えることがあります。
ヨーサガン手術痕正面9か月)
写真の方は術後9か月でかなり目立たない状態になっています。 -
術後の発声練習 click to expand contents
通常は術後1か月を過ぎた頃から本格的な発声開始となります。
クリニックの先生に確認したところ、発声練習と言っても病院から指定されているものはなく、タイでこの手術を受けたタイ人の方々は地元のボイトレ教室などに通ったりすることもあるそうですが、それは病院が関知しているものではないので詳しいことはわからないということでした。
最初はほとんど空気のような声になっていますので、まずは自分の喉に慣れることからはじめていきます。この時に無理をして芯のある声を出そうとして低い声を出さないように注意してください。術後初期の状態はなにをしても空気が漏れてしまい、人との会話がうまくいかないためにこのような状態に陥りやすくなります。
これを続けていると、空気漏れが少なくなってきた時に「元の声に戻ってしまったのではないか?」という状態になることがあります。実際にはきちんとピッチが上がっているのですが、話し方が術前の地声の出し方と同じになっているため低く聞こえます。
術後に、ある程度まで回復した後は声の低音部がカットされた状態になり、低い声で話しても宝塚の男役のような声で通るかもしれません。ヨーサガンの手術は喉の大きさを縮小し、声帯を短くする手術であり、発声のやり方次第で高い声から低い声(女性が出すような)まで抑揚が付けられるので、なるべく高い声を意識して出すように練習してください。「高い方の声が出しやすくなるようにボイトレする」という感覚で、手術前にボイトレしたことある方は感覚が掴みやすいかと思います。
また腹式呼吸を使い、声帯に負担をかけないでお腹から声を出す練習をすると、かすれた声の状態でも相手に声が伝えやすくなりますし、カラオケなども歌いやすくなります。 - 術後の音声サンプルです
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声のサンプル click to expand contents
手術を受けた方に提供していただいた声の録音データを掲載しています。
音声の比較には「あいうえお」などを発声し、周波数を測定する方法等が取られることがあるようですが、「声の高さ」だけにとらわれてしまうと実生活では浮いてしまうこともあります。ここでは30秒程度の文章を読んでいただくことにしました。
声の高さだけでなく、「抑揚」等にも注目しながら聞いてみてください。
※データはmp3形式です。再生する際は音量にご注意ください。録音環境により雑音が入っていることがあります。
★以下の4つは、例文を非当事者の方に読んでいただいたものです。
※急に音が出ますのでご注意下さい。
【参考】◆女性1・40代
【参考】◆女性2・10代
【参考】◆男性1・20代
【参考】◆男性2・10代
ここから下は当事者の音声です。手術前の音声は当事者の方に提供していただいたものです。 ■当事者1・40代・ヨーサガン
手術前1 ← 手術前に手元にあった文章を読んだ声
手術前2
術後・7か月・(手術前1と同じ文章)
術後・9か月
■当事者2・30代・ヨーサガン
※当事者2:声帯癒着による嗄声のため、ヨーサガンの手術から約2年後に「声帯ケナコルト注入術」をされた方です。
手術前
術後・9か月
術後・2年弱 →ケナコルト注射直前
術後・2年 →ケナコルト注射1ヶ月後
□当事者3・40代・ヤンヒー
術後・2年
■当事者4・40代・ヨーサガン
手術前に録音された声(音が小さいです)
術後・3週間後
術後・4週間後
術後・5週間後
術後・6週間後
術後・2ヵ月後
術後・3ヵ月後
術後・4ヵ月後
術後・5ヵ月後
術後・半年後
術後・7ヵ月後
術後・7ヵ月後(高くした声)
※手術後の発声開始許可が2週間後。その後から細かく録音したデータを送っていただきました。「徐々に声に芯が出てくるまで」がよくわかります。ありがとうございました。 - 術後ケアについて
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術後のケア click to expand contents
昨今、メディアなどでGIDが頻繁に取り上げられることが多くなり、当事者のパスの問題は昔ほど重要視されなくなっているように思います。
しかしノンカムアウトでフルタイムを目指す方にとっては、「見た目のパス」だけでなく「声パス」は重要なポイントの一つです。
MTFの声パスに関しては、いくつかのTS向けサイトに大変詳しい情報が書かれておりますので、そちらをご覧ください。
このサイトでの「声パス」とは、主に手術を受けた方々に向けたものとなります。 -
頭声と胸声 click to expand contents
ここでは、下記のように定義した上で解説しています。
★頭声(とうせい) = 「頭」に響かせる声
★胸声(きょうせい) = 「胸」に響かせる声
※声楽等で使われる用語の意味合いとは少し違います。詳細は検索等でご確認ください。
低い声を出した時、または地声を出している時に首の下方(胸のあたり)を手のひらで触れてみると響いているように感じると思います。
この状態を「胸声」、反対に高い声を出した時に、鼻の根元(目と目の間付近)に触れて響いている状態が「頭声」となります。この「鼻の根元が響く」というのはわかりにくいので、ひとまず「胸声ではない状態=首の下方が響かない状態」を目指して徐々に声の高さを上げていきます。「響きがなくなってきたかな?」という高さで、声が出しやすいいろいろな声を探してみてください。
術後早い時期にやっても、一朝一夕に出来るものではないので少しづつ練習してみてください。 -
術後の注意点 click to expand contents
ヤンヒー、ヨーサガンどちらの手術でも、術後は一時的に痰(タン)がからみやすくなります。
個人差が大きく、3か月~半年程度で治まる方もいれば、長期間(1~2年)続いてしまう方もいます。
咳払いをすることは声帯に負担をかけますので、「ゲーッホゲッホ」と大きな咳をしないように注意してください。あまりにもつらい症状の時は、内科のお医者さんに相談してお薬を処方してもらうと良いでしょう。
ちなみに痰が出やすいので市販の去痰剤を使っていたら、声が出しにくくなったという方もいるようです。
回復を早めるには(良い状態に落ち着くまでには)、発声禁止期間を過ぎてからなるべくたくさん話をして、手術後の喉に合った発声方法を探してください。カラオケに行って歌うことも効果がありますが、術後しばらくは満足に声のコントロールが出来ないでしょう。ただしうまく発声出来ないからと言って、大きな声を張り上げたりすることは絶対にやめましょう。声帯に負担をかけすぎると、声帯ポリープなど別の症状が出る可能性もあります。
術後は「今日は少し声が出しやすい!」→「今日はあんまり声が出ない…」を交互に繰り返しながら、「あれ?そういえば、このあいだより声に芯が出てきてるかも?」と、3歩進んで2歩さがるような状態が続きます。
「声がうまく出ない状態」というのは、つまり「自分の声を相手が聞き取れない状態」に繋がり、日常生活では非常に大きなストレスになります。どちらの手術でも落ち着くまで長期間になりますので、「必ずいい声になる!」という気持ちを持って、回復期間の精神面をポジティブにコントロールすることが大切です。 -
術後のカラオケ click to expand contents
術後の経過が順調であれば、どちらの手術後にもカラオケは歌えます。ただし、「ある程度回復してから」という条件がつきます。
・ヤンヒーの術後は期間を指示されていませんが、体験者の情報によると1年程度は抑揚がつけにくい状態が続くため、カラオケは厳しいとのことでした。
・ヨーサガンの術後は最低3カ月以上経ってからOK。これはドクターに確認しています。
どちらの場合も最初はくれぐれも無理をしないことが大切です。
手術体験者に聞いた、「カラオケに行った時に意識していること」を抜粋します。
■お酒は控えめにしている。お酒を飲んだ後は高い声が出しにくくなるから。
■コーヒー等の刺激のあるドリンクは控えている。
■ウーロン茶は脂分がなくなるからなるべく控えている。
■歌う前に柔軟体操している。首を左右に動かしたりしてリラックスした状態にする。
■腹式呼吸をしている。
■歌のキーを上げ下げして良い位置を確かめる。無理の無いキーで歌い始める。
■のどあめを常備している。
■水をよく飲んでいる。
中でも「のどあめ」「水」はなるべく常備しておきたいものです。とっさの会話や電話の時に「も゛じも゛じ(うまく声が出ない)」ということがなくなります。
カラオケの機種(DAMとかJOY、UGA等)は好みもあるでしょうが、術前に歌いやすかったのに術後は歌いにくくなったという例があります。「なんかしっくり来ない」と思ったら、声の練習の間だけでも他の機種を試してみたりというのもいいかもしれません。
手術後には「早く高い声を出したい!」と意識してしまって、喉を極端に緊張させた発声をして喉に負担をかけてしまう方もいます。必ずしも低い声の練習をしなければいけないわけではありませんが、喉に負担をかけないように高い声と低い声をバランス良く練習すると、柔軟に抑揚がつけられるようになり音域も徐々に広がって歌が歌いやすくなります。特に「手術前は裏声が出せたのに、手術後はどうしてもうまくいかない」という方は、喉を緊張させすぎている可能性もあるので発声の仕方を工夫して練習してみてください。
ちなみに、私がボイトレの先生に言われて試した裏声練習方法は、「引き笑いをしてみる」でした。 -
術後のキズ click to expand contents
術後のキズは、顔のそばということもあってとても気になるところです。
首は体の中でも回復が遅い場所にあたり、体質によってはケロイド状の傷になることがあります。ただ、どちらの手術も大きな傷跡ではないので、化粧などでごまかすことが出来る程度のものです。1、2年も経てば気にならないほどになっているとは思いますが、体質によってはさらに長期間かかったりすることも当然あります。下の写真は、ヨーサガンで手術をした方の術後8か月の写真です。上の矢印が手術のキズです。
ヨーサガン8か月
この方は数年前にSRSの手術を受けた時も術後のキズの治りが悪く、キズがやわらかくなるまで2年以上かかったそうです。写真のキズは少しよれているように見えますが、実際は触るとぽこぽこと盛り上がっていてまっすぐになっていない印象でした。キズがやわらかくなればさらに目立たなくなるものと思われます。キズの表面は赤みもなく、周りの皮膚の色と完全に同化していました。ヨーサガンの手術の場合、キズの位置が目立たない位置にくるため、この写真のように首を上に向けないとほとんどわかりません。この写真は首の皮を無理に引っ張って(わざと)キズを目立たせている状態です。
もうひとつ、写真下側にぽこっと出ている出っ張りについて。ヨーサガンの手術では甲状軟骨を切開して縮小するので喉仏もなくなりますが、その出っ張りがなくなったことで、もともとその下側にあった軟骨の出っ張りが少し目立つようになったということです。ただし、この方の姉妹も同じような場所が少し出ているのだそうで、遺伝?みたいなものなのでしょうか?面白いですね。この部分も首を上に向けているとかなり出ているように見えますが、正面を向いている時にはほとんどわかりませんでした。
このようにキズに関しては、本人の体質によるところが大きくなります。
手術を受けた後は首をひねったりしない方が、キズ口がよれたりしないで綺麗につくそうですから、キズが落ち着くまでの2,3週間はロボットになったつもりで「なるべく首と体を一体化」させて行動するようにしてみてください。首を動かすことが多い車の運転なども控える方がいいでしょう。 -
腹式呼吸 click to expand contents
手術後は、自分では大きな声で話しているつもりなのに相手に伝わらないため、会話中に『えっ?』と聞き返されるという方もいます。この時に無理に声量を上げようとして喉に負担をかけた発声をすると、声帯が炎症をおこして声はガラガラになり、いつまでたってもかすれ声が治らない。。。という事になりかねません。
そんなときは、腹式呼吸・横隔膜呼吸と呼ばれるものを練習してみてください。腹式呼吸を使うと、声帯の負担を減らして大きな声が出せるようになります。詳細は検索でたくさん見つかりますが、あまりにもたくさんありすぎて分かりにくいため、ここではボイトレの先生に聞いた練習方法を2つ紹介します。
練習方法1
・楽な姿勢になります。椅子に座ってても、横になってひざを立てた状態でもいいです。
・最初にゆっくりと空気を吐き出していきます。体がしぼんでいくように、すべての空気を吐き出すつもりで。
・苦しくなったらフッと力をゆるめると、体に空気が一気に入ってきます。この「力を入れないで空気が勝手に入ってくるようにする」ことが大事です。
・10回程度繰り返すと体がリラックスして腹式呼吸モードになります。
・「お腹を軽く手で押し込みながら発声」→「空気を体に取り込む」というのを繰り返します。
練習方法2
・楽な姿勢になります。椅子に座ってても、横になってひざを立てた状態でもいいです。
・息をゆっくり吸い込んで肺やお腹まで空気がめいいっぱい入った状態にします。胸とお腹が大きく膨らむように意識をします。
・ここで息を止め、その後30秒かけて息をゆっくり口から吐き出していきます(口はくちばしのようにする)
・この時「胸をふくらませたまま、お腹だけをへこませていく」練習をしてください。
・慣れてきたら、60秒、90秒と時間を長くしてみます(くれぐれも無理はしないこと)
どちらの方法も、普段の生活の中で練習出来るものですので、休憩時間等にでもやってみてください。 -
声帯癒着に関して click to expand contents
※手術後に声帯が癒着(ゆちゃく)した方の情報をもとに記しています。
ヨーサガンの手術後に、声帯が半分近くまで癒着した方が何人かいることがわかっています。声帯が短くなるのでより高い声になりそうですが、実際には癒着部分が大きくなると次のような特徴が出るそうです。
・なかなか声量が上がらない。大きな声が出しにくい。
・かすれ声の症状が強くあらわれる。(息が漏れる)
声帯の癒着は、慢性的な炎症や逆流性食道炎などでも起こり、もちろん手術等により触れた部分が癒着する例はあるそうです。現段階では、癒着した方々が手術前・手術直後の声帯の写真を撮っているわけではなかったため、癒着の原因が手術であると断言できる状態ではないことをお断りしておきます。また、正常に回復して声を出せている方でもわずかな癒着が見られる例もありました。
半分癒着
術後1年8カ月。半分近く癒着している声帯。声のかすれがある。
声帯の半分近くまで癒着すると声のかすれがなかなかおさまらず、日常生活に支障をきたすことがあります。
癒着部分が長く声のかすれが強い場合、どこの医者でも癒着部分を切ってはがすことを勧められ、その代表的な手術として「癒着部分を切り、あいだにシリコンの小さな板を挟む」というものがあります。これを3カ月?半年間挟んだ状態で固定することによって再癒着しないようにするそうです。
癒着部分を切ると、声帯の長さがその分だけ長くなるため、声のピッチは低くなります。また、癒着していた部分が多少硬くなるために、きれいな振動が得られず声質が変わることがあるそうです。
癒着はアレルギー体質だったり、比較的キズの治りの悪い体質の方に起こる可能性がある症状だそうですので、ご自分が該当すると思われる方で、手術後1年~1年半以上経つのにあまりにもかすれが改善しないという症状があるなら、一度最寄りの音声外科を受診されることをおすすめします。
正常
術後1年7カ月。若干癒着しているように見えるが、問題なく声が出せている方の声帯。
検査の結果癒着していた方でも、日常生活や仕事に支障がなければ、癒着を切る手術を受ける必要はありませんし、ボイトレやリハビリ等である程度まで改善出来ることもあるそうです。
※ちなみに、写真下側が体の前面にあたります。 -
声が元に戻る? click to expand contents
「声の手術の効果は何年持つの?」「将来声が低くなってしまうことはないのか?」という疑問をお持ちの方がいらっしゃると思います。
ヤンヒーの手術の場合、声帯じん帯が将来伸びる事を考慮して手術の時にかなり強く引っ張っているため、術後の声が超裏声状態(超音波のような音と表現する方もいます)に近くなっています。この状態から元の声に戻る可能性は次のようなものが考えられます。
・甲状軟骨と輪状軟骨を結んでいる糸が、なんらかの理由で切れたりほどけたりした。
・声帯じん帯が伸びて声が低くなった。ただし「元の声」のレベルまで戻るのかどうかは不明です。
現段階において、TSGCでこのようなケースは確認していません。
ヨーサガンの手術の場合、声帯じん帯と甲状軟骨の一部を切除してしまうため、一旦手術をしてしまうと元の声に戻すことは不可能です。短くなった声帯で低音域の練習をしていけば、それなりに低い声を出すことが出来るようになるかもしれませんが、手術前と同じような声にはならないものと思われます。
どちらの手術においても、加齢による筋力の衰え等によって声が低くなることはあります。これはGIDでなくてもある事ですのでその点は受け入れるしかありません。 - これから手術を受ける方へ
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手術を受けようと考えている方へ click to expand contents
現在、きちんとした形でコンタクトを取ることができる手術体験者は、術後~5年までの比較的短期の方です。そのため、術後長期間経過した時にどうなるのかはっきりしていません。手術の結果・経過は「個人差」によるところがかなり大きくなります。そして「手術」ですから、そこにはリスクがないとは言い切れません。手術に過度な期待を持たないことが大切です。
もちろん良いところもあります。それは「くしゃみ・咳」です。
ボイトレで声パスできる方でも、
「ぶぇっくしょーんっ。。。ハッ!」
「ゴホッゴホッ」
と低い声でやってしまった経験のある方はいるのではないでしょうか?
術後にその心配はなくなっています。
早期の職場復帰や、QOL向上のためには「手術をしたからこれでいいんだ」と満足することなく、術後に声のトレーニングをすることが重要なポイントです。
また、「声パス」の要素は声の高さだけではありません。学生ならば声の高さだけで乗り切れることもあるかもしれませんが、社会に出れば「話し方」や「言葉づかい」などが大きく関わってきます。以前にボイトレ研究している知人から、「女性はフレーズの語尾をわずかに上向き気味に話す傾向がある」という話も聞いたことがあります。また、口角を上げて話すだけでも声の印象がグッと明るくなり、よりはっきりと綺麗な声で相手に言葉が伝えられる。これらは、手術を「受ける・受けない」を問わず出来ることではありますが、そんな細かいことも含めて常に「意識」することで、手術の結果はより満足なものになることでしょう。 -
手術に行くまで click to expand contents
◆お酒・刺激物(辛いもの)等をなるべく控える
→喉への負担を最小限にします。
◆タバコは1か月前からやめる
→タバコを吸うと声帯が腫れて盛り上がり、声帯の間に隙間が出来やすくなるため、嗄声(させい・かすれ声のこと)になりやすくなります。術後は特に弱った喉にダメージを与えます。どうしても止められない方は、病院や薬局等の禁煙ガムやパッチなどを利用する方法もあります。最近では、町の小さな内科でも「禁煙外来」のあるところが増えてきています。保険適用(条件あり)ですので、これを機会に積極的に利用するとよいでしょう。
◆風邪をひかないように注意する(健康状態の管理)
→喉や身体の状態が良くないと、スケジュール通りに手術が受けられないことがあります。1か月前から健康管理をまめにしてください。
※ぜんそく等呼吸器系疾患のある方は、手術直前まで発作が出ないように術前管理をしておかないと全身麻酔の手術を受けることは出来ません。普段使用している薬や発作時に使用する吸入器は必ず持ってきて下さい。
◆耳鼻咽喉科で声帯の写真を撮ってもらう
→ヨーサガン・クリニックで手術を受ける場合、音声外科や耳鼻咽喉科(声帯の撮影出来るスコープがある病院)で術前の声帯の写真を撮ってもらっておくと、帰国後に役立つことがあります。術後の経過が芳しくないときに再度写真を撮影してもらい、スキャンしてタイの先生に送り経過を確認してもらうという使い方ができます。
ノンカム・フルタイムで「近くの病院を利用したくない」という方は、個人病院等を探してみると良いかもしれません。事前に電話をして「声帯の写真を撮ってもらえるか」「その写真をもらうことは可能か」ということを確認しておけば無駄足を踏まずに済みます。ちなみにスコープは痛いものではありません。 ヤンヒー病院での術式の場合は、声帯を直接いじるわけではないので写真を撮る必要はありませんが、事前に撮っておくとトラブル時に役立つかもしれません。手術直前の検査でスコープを使って診察することもあります。(残念ながら写真はもらえないようです)
※補足(2009-12-29)
ヨーサガンクリニックでも2009年10月から下記のような声帯スコープを使った診察をしています。これは口から咽頭へ挿入するタイプのスコープです。
術前の喉の写真がほしい場合はCD-ROMなどに焼いてもらうことが出来るようです。(2012年09月現在)
ヨーサガンスコープ
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アレルギー体質の方へ click to expand contents
アレルギー体質、傷の治りの悪い体質の方は術後の回復が通常よりも遅くなる傾向があると言われています。
他ページにも記載していますが、術後の経過は個人差がとても大きく、「あの人は○ヶ月であんなに声が出てる。それに比べて私は…」という比較は全く参考になりませんので、あせらずじっくりと構えてください。
ただし「声が全然出せない」「嗄声がひどくて日常生活に支障が生じている」ような症状が1年以上改善しないようならば、癒着(ゆちゃく)など他の原因が考えられるので、最寄りの音声外科、耳鼻咽喉科を受診されることをおすすめします。(「癒着」に関しては別ページを参照)